2008.10.27
VOL.8 食べるために釣る
無性に釣りがしたくなる時があります。
「釣りに連れていってください。トラがいいんですが」
「よしわかった。明日行こうか?」
漁師さんと私はこんな関係です(笑)。
早いもので、前回行ったのがハーレー軍団と行った時
だから約2年前の12月ということになります。
とは言っても、7回も釣り情報を発行していたら、ほ
とんどの季節は網羅しているはずだから、今回はいつ
もにもまして個人的な楽しみを優先しました。
10月20日(月)晴れ 小潮 満潮 14:16 干潮06:58
晴天でべたなぎというまたまた最高のコンディション。釣りのメンバーは漁師さんとホテルマンの私に板前の生野さんの3人で午前9時15分に出港。本日のポイントは漁港から10分のところで、五目釣りの枝3本仕掛けで錘は25号。エサは活きエビを使いました。
魚釣りに行って「今日はトラハゼ狙い!」と言うのは、野球で言えば「ピッチャー返しでヒット狙い!」と言うようなもの。
陸に上がってから、「いや~、トラハゼ狙いのつもりが鯛とハゲが釣れちゃったよ~」と言うのは、ヒーローインタビューで「あの打席は狙ってましたか?」という質問に、「とにかく塁に出ることだけを考えていました。ホームランになって最高です」と答えるようなものでしょう(笑)。
この日は、鯛、トラハゼハゲなどが釣れました
実はこの日は、幻の満塁ホームランが2回ありました。最初は開始後30分に、舟の近くでイワシが湧いたので「ヤズかハマチが追いかけているのかねぇ」と言った3分後に板前の生野さんの竿が異常にしなりました。
日頃からチヌなど大物釣りも頻繁にしている生野さんはうまく合わして慎重にリールを巻いていましたが、突然すごい勢いで横に走られ、一瞬で仕掛けを持って行かれてしまいました。
明らかにハマチの仕業でした。
その次は私。開始後1時間を過ぎた頃、一人調子良く鯛やトラハゼを釣り上げていたときのことです。 急に鯛ともハマチとも違う強い引きを感じたのです。
確かに重いが何とかいけそうだと10メートルくらい上げたところで急に下に引き込まれ、錘ごと持って行かれてしまいました。あの引き方は、小さなトラハゼにヒラメが食いついたのだろうということでした。
この日の大物賞はこの33cmの真鯛でした。
幻の満塁ホームランは釣りの後もたびたび話題に上り、「もし・・・だったら」と、いつまでも釣り人達に夢を語らせてくれます(笑)。
家に帰り、釣果がご馳走となって食卓に並ぶと家族みんなが喜びます。
「これお父さんが釣ったの?」
「そうだよ!」
「お父さんすごいね~」
私は子供達に食べることの楽しさを教えます。
「白身の魚にそんなにべっとりしょう油を付けたら繊細な味がわからないでしょ。」
「真ん中だけ食べてもったいないなぁ。この魚は骨やヒレのところが一番おいしいんだよ。」
家族みんなが魚好きのわが家では、たくさん釣ってくるとお父さんの存在感が大きくなるので(笑)。
釣果はこの通り
開始後1時間
↓
開始後2時間
↓
開始後3時間
私が食べていたのはこれなんですこれ。
なんだかわかりますか?
トラハゼです。
過去にも度々書きましたが、トラハゼの天ぷらは絶品なんです。
お客さんにも言うんですが、あまり信じていただけてないみたいなんです(別にいいんですけどね…..)。
漁師さん曰く、「トラハゼの刺身を食ってみな!甘いから!」
この日、早速生野さんと調理場で試してみると、本当に甘かった。
しかもそれは、時間が経てば経つほどうま味が増していくのです。
「これは日本酒がすすむなぁ!」
トラハゼは小さいから調理に手間がかかりますが、苦労の甲斐があるおいしさです。
ぜひお試し下さい。
甘い甘いトラハゼの刺身
鯛は皮と身の間にうま味が詰まっているので、刺身では松皮造りにすることが多いのですが、いつも同じでは面白くないので、今回は皮の部分をバーナーで炙って“焼き霜造り”にしてみました。
こうすると香ばしくなるだけでなく、うま味も増すので、ぜひ試してみてください(この日はトラハゼの造りもあったので鯛は炙りましたが、鯛の味が一番純粋にわかるのは松皮造りだと思います)。
“焼き霜造り”と“ムニエル”を作ってもまだまだ鯛が残っていたので、押し寿司も作ってみました。
寿司というと、サビキでアジをたくさん釣った時に生野さんによく作ってもらいますが、あれはあれで、
「この小さなアジがどうしてこんなにおいしいのか!」
というほど美味ですが、この“焼き霜造り”にした鯛の押し寿司もかなりの美味でした。
さて、あのハゲはどうしたのかというと、今回は煮付けにしました。
鯛の押し寿司に紅葉おろしとネギをのせてカボスを絞って食べてみました。
ハゲの煮付けはいろんな料理屋さんで食べたことがありますが、あまりおいしいと感じたことがありませんでした。おいしくない理由は明白で、コテッと煮てないからです。
ハゲはもともと淡泊な味の魚だから、骨から出たうま味の混ざった煮汁が身に染み込むまで十分に煮た方が絶対においしいのです。
今回は抜群の素材と生野料理長の腕に感激しました。
コテッと煮たハゲの煮付け。
味の染みた肝を豪快に食べる。
【板前さんのワンポイントアドバイス 第5回 鯛のムニエル】
①内臓や鱗をキレイにとって今回はちょっと高度な包丁さばきで、鯛を背開きにしてみましょう。
↓
②塩・コショウをふって、水分が抜けるまで少し時間をおきましょう。
↓
③皮の方だけに小麦粉を付けます。
↓
④熱したフライパンにたっぷりのオリーブオイルを敷いて弱火で皮の方から焼きます。
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⑤皮がこんがり焼けたら裏返してバターを入れます。
↓
⑥鯛にバターが馴染んだらレモンを絞って香り付けをします。
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⑦最後に白ワインを入れて強火にします。
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⑧盛り付けたら、フライパンに残った汁を上からかけます。