2022.06.01
ホテルマンと漁師の釣り情報 VOL.14
深い深い海底。水面を覗き込んでも何も見えない。そんなところにいる魚がエサを「トントン」とつつく感覚。
『嘘だろ。信じられない!(松前の心の声です)』
釣り針に付けたあんな小さなエサを魚が見つけて食らいつく。しかも針が魚の口にうまくかかれば海面まで上がってくる。52 歳になった今でも心の中では『信じられない!』という感覚があります(これ松前の本心です)。
私はそれが魚釣りの面白さであるような気がします。
魚釣りの楽しさを覚えたのは小学2年生の時です。そして釣りの本を読んでいろいろな魚種に挑戦してみようと深くはまっていったのは6年生の頃です。今から 40 年前は釣りの漫画もたくさんあり「少年ジャンプ」「少年サンデー」に釣り漫画の連載があって
『オレもあれを釣りたい!』
と、読んだ翌日には教室に釣りキチ仲間が集まってみんなで興奮して語り合っていたのを思い出します。(「釣りキチ三平」他、多数の釣り漫画がありました)
オッサンになった今でも釣りは興奮します。しかもあの頃と違いお酒も大好き。前回の釣り情報では「食べるまでが釣り!」ということで、柳井グランドホテルの厨房から釣果とお酒を楽しむ現場までお伝えしましたが、今回も『美味しく食べられる魚が釣りたい!』という気持ちでのぞみました。それでは釣り情報 VOL.14の始まりです。
5 月 24 日(火)晴れ 長潮 満潮 16 時 15 分 干潮 10 時 30 分
今回のメンバーは宮城県から一條さん(湯主一條 20 代目当主)と太見さん(海賊 DMC 代表取締役)と私の3 人でいつもの小濱船長の船に乗せていただき行ってきました。一條さんとは 13 年のお付き合いになりますが、山口県での釣りは 4 回目になります。これまでの釣りは 11 月が 2 回と 8 月が 1 回で、その時期は鯛がメインだったのですが、5 月というのは今回が初めてなので、これまでと違う釣りを体験していただくことができました。
この日の狙いはホゴメバル(カサゴ)。鯛やトラハゼやベラも釣れるだろうと漁師さんは言われていました。エサは活き海老とイカナゴ(塩漬け)を使用しました。前日まで魚が活き海老に食いついてこなかったということで、贅沢にも 2 種類のエサを用意してのぞみました。
しかし、漁師さんの心配とは裏腹に一條さんの竿に活き海老でいきなりアタリがきました。最初から良型のホゴメバルでした。
「ホゴはちゃんと錘が海底に着かないと釣れないからね !」
と言われた直後でした。そしてすぐに太見さんにアタリが。瀬戸内海で一番おいしい魚だと小濱船長が常々言っているトラハゼでした。
「2 人とも上手!この調子なら水深の深いところに行っても大丈夫!」
と船長からお褒めの言葉が。
実は柳井グランドホテルの釣りパックではお子様、女性、初心者が多いので、最初は水深の浅いところから始めて、錘を海底に着ける感覚を理解していただいてから水深の深い場所に移動します。どうしてもわからない場合は海底が砂場で難易度低い場所で釣ります。
爆釣ペースではありませんが、常に誰かが釣っているという感じで最初の 30 分が経過した時です。
「あ~ヤズだなこれは」
漁師さんの竿がグーっとしなり、魚が右に左に動きまくります。これはヤズの特徴で釣れた時の動き方は魚によってみんな違います。この違いが釣りの面白さでもあり、釣れてから2~ 3 回リールを巻いた時点でこれは「○○だな!」「大きいぞ!」などと言って、言った通りの魚種・サイズだとドヤ顔になるものです(笑)。
海面に上がってきたのは漁師さんの予想通りヤズでしたが、手のひらサイズの鯛も釣れていて、タモを持って待機している私に「松前君ヤズの方をすくって」と指示が。しかし暴れまくるヤズがうまくすくえず、逆に鯛の方をすくってしまい、結局漁師さんが自分でタモを持ちヤズをすくい上げました。
その 5 分後くらいでしょうか。私の竿が突然もの凄い強い力で海に引き込まれたのです。しかしリールは少しなら巻ける。
『釣れている!!!』
私には確信がありました。しかし漁師さんは「松前君、根がかり根がかり」と言います。漁師さんはいつも竿先の動きを見るだけで魚種を必ず言い当てるのですが今回ばかりは違いました。
「松前君。竿を信じて巻いて。竿と糸が一直線になったら切られるよ。」
釣れた魚が大きいと、魚の引きが強い時に『逃げられてはいけない』とか『竿が折れてはいけない』と思って逆らわないように竿を釣り糸と同じ方向に向けてしまいがちですが、それをしたらダメということです。
「竿を信じて巻いて!」は名言だと思いました。魚が強い力で引っ張るので竿が凄くしなりましたが、竿を信じてゆっくりリールを巻き、ようやくぼんやりと赤い魚影が見えてきました。漁師さんがタモを持って構えながら、
「鯛じゃ。いやコブダイじゃ!」
巨大サイズでした。私がこれまで釣った魚で最大は42センチのチダイでしたが、それをはるかに越えるサイズでした。ここまでのサイズの魚を釣ったのは初めてですが、鯛の引きとは違うことはわかっていました。鯛のアタリは独特で小刻みに強くたたくように引くのですが、それとは違うゆっくりと強い力で引きずり込むような感じでした。
日頃はサザエなどをエサにしているから水深 10 メートルくらいところにいるらしく、35 メートルの深さで釣れたというのはたまたまで、その偶然こそが五目釣りの面白さなのだと思います。
この日は 2.93 キロのメスのコブダイを釣り上げた直後に 35 センチの真鯛が、手のひらサイズのチダイとダブルで釣れて自分自身『今日はどうなっちゃってるの?』という感じでした。
この後私にはアタリがなくなりましたが、絶好調の一條さんと太見さんが良型のホゴメバルとトラハゼをたくさん釣られたので、宮城県に釣果をたくさん送ることができました。
【後日談】今回の釣果は宮城県にクール便で送り、湯主一條さんの厨房で調理され、社員食堂でスタッフの皆様が召し上がられたそうです。